その11 2台の車が去った訳 徳2号
 
数年前起きた芝川での恥ずかしーい出来事を告白しちゃいます。
得意なポイントでイブニングライズをと思い、薄暗い中頑張ってました。小雨の振る中決して条件は良くなかったのですが、幸いにもいくつかのライズを見ることが出来ました。最後のチャンスだと勢い込み一番大物っぽい淵尻のライズを狙うことにしました。すぐ隣の道路端には2台の車が止まって、じーっとこちらの様子を伺っているのが感じられます。きっと淵尻のライズが車からも見えるのでしょう。釣りをすでにあきらめて見学をしている連中を前に見事に釣り上げれば、それは痛快だろうな等と余計なことを考えたのが、そもそもの痛恨の極みの開始となるきっかけとなったのです。気持ちがはやり、道具や身の回りの確認を怠ったまま、ライズめがけてキャストを始めました。
 バシャッと来たが合わせ遅れて再度キャスト!と突然手元が軽くなった。見るとリールシートからリールが外れ落ちて淵の深みへと消えていく!焦った私はその場にしゃがみ込んでラインをたぐり寄せ始めた。リールが見えて来た!更にラインを勢い良くたぐるとその反動で今度はスルスルとリールが下がって行く。深いため息のあと、またせっせとラインをたぐる。「これぞ水中ヨーヨーってか?」何度目かの挑戦でコツをつかんだ。ひたすらリールを怒らせないようにそーっとラインをたぐり寄せてとうとう手中に収めた!まるで大ヤマメを取り込んだ感動のようだ。きっとこの光景を薄暗い中で離れて見ている人には、そのように見えたのかもしれない。それがリールだとわかったとたん、止まっていた1台の車が走り去った。
 リールを巻き直し、せかすようにライズを繰り返す大ヤマメめがけてキャスト!次の瞬間、今度はロッドの継目がすっぽ抜けて穂先がライズめがけて突き刺さっていった。穂先がヤマメを直撃したのではないかと目を凝らすほどの勢いだった。あたかも槍で獲物を狙う狩人のように映ったかもしれない。そして、エンジン音。もう1台の車が怒ったように発進していった。
 2台の車に対して無駄な時間を過ごさせたなんて反省はみじんも無い。かえって面白い話のねたをただで与えてしまって損をした気分である。